なぜ企業はセミナーを行うのか?マーケティングプロセス全体から見る企業セミナーの役割
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従来から行われているいわゆる企業セミナーは、Webマーケティングが全盛の現代でも引き続き盛んに開催されています。セミナーとは企業のマーケティング活動においてどのような役割を持っているのか、その効果的な活用方法と共に考えてみましょう。
日本マーケティング協会(JMA)によると、マーケティングとは「企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である」と定義されています。端的に表現すると、「自社製品などの市場を創造するために行われるさまざまな活動全般」ということができるでしょう。
広義には製品開発やそのための事前リサーチ、さらに販売後のアフターフォローやCSRまでも含みますが、”日常的にマーケティング”という言葉が用いられる場合は、見込み客や顧客といかに良好で親密な関係を構築して自社製品の販売を拡張・拡大していくのか、その方法や手法のことを指す場合が一般的でしょう。
「新しい製品の発売をいかに多くの人に知ってもらうか?」「自社製品の機能をどうやって理解してもらうか?」、「同業他社製品と比較してどこがどのように優れているのか?」など、企業が消費者や見込み客に知ってほしいこと、伝えたいことは山ほどあります。
これまで、新製品告知のための広告やダイレクトメール、電話や営業による人海戦術などさまざまな方法を用いて、見込み客等との関係を築こうとしてきました。マーケティング活動における「セミナー」もそのような具体的な関係構築の手法の1つです。
また、企業から消費者や見込み客等に対する情報発信に加えて、近年は消費者からの意見や要望を製品開発に直接取り入れたり、クレームなどに積極的に対応することで、企業と消費者間の距離をより親密にしようとする活動も多く見られます。さらに、どこでどのように販売するのがその製品に適しているのか、の検討もマーケティング活動における重要な課題の1つです。
近年、マーケティングの方法を大きく変えたのがインターネットです。インターネットによって人や組織間で交換できる情報の量やスピードが大幅に改善されたことは、周知のとおりです。また、時間や地域に依存することなく情報流通が可能なため、マーケティングにおいてもグローバリゼーションを加速させることになりました。
インターネットの登場・普及と共に生まれたのが、Webマーケティングの手法です。詳細は割愛しますが、従来のFace to Face中心のマーケティングから、インターネット上のWebサイトやSNSなどを活用し、対面の必要性や直接接触がないバーチャルなマーケティング活動に力点が移りつつあります。Webマーケティングは従来のマーケティング手法と比較して、「実際にモノや人を動かすことなく、効率よく情報交換が可能」なためマーケティング効率や費用対効果が非常に優れているというメリットがあります。
Webマーケティングには上記のように多くのメリットがありますが、しかしFace to Faceのリアルマーケティングが不要であるかといえば決してそうではありません。
セミナーなどを通じて行うリアルマーケティングには、
などのメリットがあります。しかしWebマーケティングと比較して効率面などでは、圧倒的に不利です。ポイントは、リアルなセミナーをどこでどのように使うか、効果的な活用機会と活用目的を見定めることです。
大きく網を広げて大量に新しいリードを獲得したり、多くの見込み客を対象にナーチャリングを実施する場合は、ある程度効率を重視した方が良いでしょう。しかし例えば一定以上の受注確度の見込み客に対するアプローチであれば、多少効率を犠牲にしてでもリアルなコミュニケーションが有利な状況を作り出すことも少なくありません。
例えば、BtoBの商材を持つ企業のマーケティングにおいて、新規見込み客を獲得する場合を見てみましょう。比較的広い範囲の業界に訴求できる製品であれば、最初はWebマーケティングによって広く見込み客とコミュニケーションを取り、それらの見込み客を対象にして、ナーチャリングなどによって徐々に絞り込んでいくような方法が有効でしょう。しかし、中には非常に専門的でニッチな製品も存在します。そのような場合には、最初からその製品または関連するテーマでセミナーを開催すれば、たとえ参加者が少なくても確度の高い見込み客を集めることが可能です。専門的な製品だと元々母数がそれほど大きくないいのでマーケティング効率も向上するはずです。さらに、専門的な情報はインターネットなどで公開されている機会も少なく、見込み客の方でも新しい情報を求めている場合も少なくありません。そのようなケースでは、セミナーが想定以上に効果を発揮する場合があります。
重要なのは、企業のマーケティングプロセス全体から判断して、セミナーをどう活用すれば最も有効なのかを検討・判断することだと言えます。