分析機器や理化学機器をはじめとする専門性の高い製品を取り扱い、大学や研究機関、製薬会社、食品メーカーなど幅広い分野の研究開発を支援している株式会社セントラル科学貿易様。
現在ではメールマーケティングやフォーム活用、名刺管理ツールとの連携などを通じて継続的なマーケティング活動を展開しています。しかし、その体制が整うまでには約10年にわたる試行錯誤がありました。単なるツール導入ではなく、「顧客情報を組織の資産へ変える」という大きな変革に取り組んできた歩みでもあります。
同社が本格的にマーケティング活動へ取り組み始めたきっかけは、顧客情報の管理体制に対する問題意識でした。
「入社してすぐに気付いたのは、会社として顧客情報を一元管理していないことでした。それぞれの営業担当者はお客様の情報を持っているのですが、それが共有されていなかったんです」(杉本氏)
もちろん、日々の営業活動はしっかり行っていましたが、顧客情報は個々の管理下にあり、会社として蓄積・活用できる体制とは言えませんでした。
「会社でありながら、顧客管理に限っては、組織ではなく個人商店のような状況でした」(杉本氏)
展示会や学会で接点を持った顧客情報も、担当者ごとに管理されている状態。営業担当者が異動や退職をすれば、その関係性や履歴が見えなくなってしまうリスクも抱えていました。
そこで杉本氏が最初に着手したのが、顧客情報の集約でした。営業担当者から名刺のコピーを集め、展示会や学会の来場者リストを整理し、地道にデータベース化していったのです。
「最初は名刺のコピーを集めて、自分でリストを作っていました。数百件くらいのデータからスタートしたと思います」(杉本氏)
現在のような自動化された環境からは想像しにくいものの、同社のマーケティング活動はこうした手作業から始まりました。
当初は他社のメール配信サービスを利用し、不定期な情報発信を実施していました。しかし、上限5,000通の一斉配信とクリックログ取得が中心のシンプルな仕組みだったため、徐々に限界を感じるようになります。
「まずは情報発信を始めようという段階だったので、マーケティングオートメーションまでは考えていませんでした。ただ、続けていく中で『もっとできることがあるのではないか』と思うようになりました」(杉本氏)
その頃から、組織として顧客と継続的な関係を築く仕組みづくりが課題になっていきました。
自社のビジネスモデルに合わせて進化できる仕組みを選択
本格的なMAツールの検討を始めた際、同社が最も重視したのは「柔軟な拡張性」でした。実は当時、他社サービスの導入をほぼ決めかけていたといいます。しかし最終的にMRCを選んだ理由は、テンプレートに業務を合わせるのではなく、自社の運用に合わせてシステムを育てられる点にありました。
「うちはメーカー機能も商社機能も持っていますし、ディーラーが入るケースもあります。
ユーザーなんだけれど仕入先でもあるような複雑な関係もあるので、一般的なシステムでは運用しづらい部分がありました」(杉本氏)
同社では製品や事業によって商流が異なり、顧客属性も多岐にわたります。そのため、画一的なシステムでは運用が難しく、自社独自の管理項目やルールに対応できることが不可欠でした。
さらに将来的には、営業支援や売上管理との連携も視野に入れていました。
「将来的な拡張性も考えていました。自社の運用に合わせて育てていけるシステムが必要だったんです」(杉本氏)
導入後はコンテンツ作成のサポートも受けながら運用をスタート。技術面よりも、その後の運用体制づくりの方が大きなテーマとなっていきました。
情報発信の文化を根付かせることが最大の挑戦だった
導入時に苦労したのはシステムではなく、継続的に情報発信を行う文化を社内に根付かせることでした。
「一番大変だったのは継続的な情報発信です。もともとそういう文化がなかったので、各部署から情報をもらったり、こちらから企画を提案したりしながら進めていきました」(杉本氏)
営業担当者の反応もさまざまでした。「積極的な人もいれば、全く関心がない人もいました」(杉本氏)
それでも展示会案内や新製品紹介だけでなく、技術情報や導入事例、課題解決コンテンツなどを少しずつ増やしていきました。
単に製品を紹介するのではなく、「この製品がどのような課題を解決するのか」という顧客視点の情報発信を徹底したのです。その積み重ねが社内にも変化をもたらしました。
「今は営業側から『こういう内容を配信してみたい』という声が上がるようになっています」(斧窪氏)
以前は営業活動を支援する立場だったマーケティングが、今では営業と一緒に施策を考える存在へと変わっています。
CAMCARD※連携が展示会フォローのスピードを変えた
近年、特に大きな成果を感じているのがCAMCARDとの連携です。
以前は展示会や営業活動で取得した名刺をExcelへ入力し、顧客データベースへ登録していました。登録のタイミングも担当者ごとに異なり、情報共有まで時間がかかることも少なくありませんでした。
「最初はなかなか定着しませんでした。各担当者が別のアプリを使っていたり、今までのやり方で十分だという声もありました」(斧窪氏)
しかし、目的を丁寧に説明し続けたことで徐々に浸透していきます。「名刺管理が目的ではなく、MRCへデータを取り込み、メール配信やマーケティング活動へつなげることが目的だと伝え続けました」(斧窪氏)
現在では展示会終了直後にお礼メールを配信できる体制が整いました。
「お客様が何の展示会だったか忘れてしまう前にフォローできるようになりました」(斧窪氏)
営業担当者が名刺交換した翌日にはメール配信が可能となり、マーケティング活動のスピードは大きく向上しています。
顧客の反応が見えることで営業活動も変わった

MRC の活用によって、顧客行動が見えるようになったことも大きな変化でした。
資料をダウンロードした顧客。特定ページを閲覧した顧客。メールをクリックした顧客。
そうした情報を営業担当者へ共有することで、アプローチの優先順位付けができるようになりました。
「今度その地域へ行くので、この資料をダウンロードしたお客様にも会ってみよう、という動きができるようになっています」(斧窪氏)
現在は営業担当者が直接MRCへアクセスする仕組みではありませんが、マーケティング部門が情報を整理し、営業へ連携することで活用が進んでいます。顧客行動を起点に営業活動を組み立てられるようになったことは、同社にとって大きな進化でした。
「メールを読んでいます」が成果の証になった
成果は数字だけではありません。
顧客との関係性にも変化が現れています。
「お客様先へ伺うと、『メールいつも読んでいます』と言われることが増えました」(斧窪氏)
「この製品もセントラル科学貿易さんが扱っていたんですね」という声も増えたそうです。
同社では数多くの製品を取り扱っていますが、その認知を広げる役割もメール配信が担うようになりました。
特に印象的だったのがコロナ禍での取り組みです。
物流停滞や供給不足が続く中、「即納可能製品リスト」を継続的に配信したところ大きな反響がありました。
「その時はかなり反響がありました。お客様が本当に困っているタイミングだったので、必要な情報を届けられたのだと思います」(杉本氏)
単なる販促ではなく、顧客に役立つ情報を届ける。その姿勢が信頼構築につながっています。
営業とマーケティングが同じ顧客情報を活用する組織へ

現在、同社ではMRCと社内システムとの連携を進めています。
実現すれば、営業担当者はメール反応履歴だけでなく、売上情報や納品情報も含めて顧客情報を確認できるようになります。
「売上や納品した製品情報とも連携できれば、営業活動にさらに活用しやすいデータになります」(杉本氏)
現在はマーケティング担当者中心の活用ですが、今後は営業担当者へも利用を広げていく予定です。
個人が持っていた顧客情報を会社の資産へ変える。そして次は、その資産を営業とマーケティングが共通で活用する組織へ進化させる。
約10年前に始まった顧客情報の共有化は、いま営業とマーケティングをつなぐ経営基盤へと発展しています。セントラル科学貿易様の取り組みは、マーケティング改革とはツール導入ではなく、「情報を共有する文化づくり」から始まることを示している好例と言えるでしょう。
※CAMCARD:INTSIG Information Co., Ltd.が開発、キングソフト株式会社が提供するクラウド型名刺管理サービス。