電子顕微鏡をはじめとする最先端の理科学機器を世界中へ提供する日本電子株式会社様。
同社では長年にわたり、大学や研究機関、民間企業の研究開発部門など、多様な顧客との関係構築を大切にしてきました。
同社が取り扱う製品は、高度な研究や分析業務を支える専門性の高い機器です。そのため、一度接点を持った顧客との長期的な関係づくりが重要になります。しかし以前は、その関係構築を支える情報発信や顧客管理の仕組みに課題を抱えていました。
当時の情報発信の中心は紙のDMでした。セミナーや展示会を開催するたびにDMを制作し、印刷し、発送する。そうした運用が当たり前だった時代です。しかし、DMには大きな課題がありました。届いたのか。読まれたのか。興味を持ってもらえたのか。その反応を知ることができなかったのです。
「DMは見ていただけたかどうかも分かりません。宛先不明で大量に返送されてくることもありましたし、顧客情報のメンテナンスにも限界を感じていました」(廣川氏)
さらに、営業活動や展示会で獲得した顧客情報も十分に活用できていませんでした。名刺管理ツールには何万件もの顧客情報が蓄積されていましたが、それらは活用されることなく眠っていた状態だったといいます。
「名刺はしっかり登録されていました。ただ、登録することが目的になっていて、その先の活用ができていなかったんです」(廣川氏)
顧客情報はある。しかし活用できていない。
そうした状況を変えるきっかけとなったのがMRCでした。
同社がMRCを本格的に活用し始めた背景には、ウェビナー施策の強化があります。現在では一般的になったウェビナーですが、日本電子様ではコロナ禍以前の2015年から取り組みを開始していました。
「海外グループ会社が先行して取り組んでいたこともあり、日本でもやってみようという流れがありました。全国のお客様に効率よく情報を届けられる方法として期待していました」(廣川氏)
しかし、ウェビナーを実施するには集客が必要です。営業担当者が個別に声を掛ける方法だけでは限界がありました。そこで、顧客情報を活用したメールマーケティングを本格化。MRCを活用しながらターゲットに応じた情報発信を進めていきました。
「コロナ前の段階からウェビナー集客は課題でした。ターゲットを絞ったメール配信を行うことで、効率的な集客ができるようになりました」(廣川氏)
こうして同社のマーケティング活動は大きく変化していきます。
「送って終わり」だったDMから、顧客との継続的なコミュニケーションへ

現在、日本電子様では国内外向けに年間約70回のウェビナーを開催しています。テーマは新製品紹介だけではありません。分析技術の解説。研究事例の共有。装置活用ノウハウ。初心者向け講座。対象者もベテラン研究者から若手研究者、大学院生、学生まで幅広く、多様なニーズに応えるコンテンツを発信しています。
これらの集客を支えているのがMRCによるメールマーケティングです。現在では数百万通規模のメール配信を実施しており、顧客の興味関心や所属分野に応じて情報を届けています。
「やればやるほど何らかの反応が返ってきます。メールを送り続けることで、お客様との接点を維持できるようになりました」(廣川氏)
DM時代との大きな違いは、顧客の反応が見えることです。メールが開封されたのか。セミナーに申し込んだのか。資料をダウンロードしたのか。そうした行動履歴を把握できるようになりました。その結果、問い合わせや資料請求も増加。メールへの返信という形で顧客から直接連絡が入るケースも増えています。
さらに、新しい冊子や技術資料を公開した際には、ホワイトペーパーとして配信。ダウンロードを通じて新たな見込み顧客との接点創出にもつながっています。
コロナ禍でも止まらなかった顧客コミュニケーション
日本電子様にとって、コロナ禍は大きな転換点でした。多くの企業が展示会や対面営業の停止によって顧客との接点づくりに苦労する中、同社は比較的スムーズに対応できたといいます。その理由は、すでにウェビナーとメールマーケティングの基盤が整っていたからです。
「コロナだから新しく始めたわけではありません。それまで続けてきた取り組みをそのまま展開できました」(廣川氏)
対面営業が難しくなったことで、マーケティング部門への期待も高まりました。「会社から求められる役割や責任は大きくなりましたし、社内での注目度も上がりました」(廣川氏)
従来は営業主導だった顧客コミュニケーションも、マーケティング施策との連携が重要視されるようになったのです。結果として、ウェビナーやメール配信を軸にした情報発信は、コロナ禍における重要な顧客接点として機能しました。
Salesforce連携で営業とマーケティングをつなぐ
現在、日本電子様が力を入れているのがSalesforceとの連携です。これまではSalesforceの顧客情報をMRCへ取り込み、メール配信などへ活用する流れが中心でした。一方で現在は、MRCで取得した問い合わせ情報やセミナー参加情報をSalesforceへ連携し、営業活動へ活用する仕組みづくりを進めています。
「MRCで取得した情報をSalesforceへ展開し、営業が一元管理できる環境を作っています」(廣川氏)
顧客がどういったセミナーや展示会へ参加したのか。オンライン上でどのような行動をとったのか。どの製品に関心を持っているのか。そうした情報を営業担当者が把握できることで、より精度の高い提案活動が可能になります。
さらに、管理職や本部も同じデータを参照できるため、組織全体で顧客情報を活用できる環境づくりが進んでいます。
必要十分な機能と手厚いサポートが長期活用を支える

日本電子様では過去に海外製MAツールも並行して利用していました。しかし最終的にはMRCを継続利用しています。
その理由は「必要十分な機能」と「手厚いサポート体制」でした。
「海外製ツールは見た目が洗練されていますが、実際に使うと細かな設定ができなかったりします。その点、MRCは痒いところに手が届く印象があります」(廣川氏)
また、Salesforce連携などの個別要望にも柔軟に対応してきたことが高く評価されています。「何より相談した時のレスポンスが早い。困った時にすぐ相談できる安心感があります」(廣川氏)
10年以上にわたり活用を続けている背景には、単なるツールではなく、伴走してくれるパートナーとしての信頼がありました。
AI活用とグローバル展開でさらなる価値創出へ
現在、日本電子様では蓄積された顧客データのさらなる活用を進めています。長年にわたり蓄積してきた顧客データは同社にとって大きな資産です。「膨大なデータがありますので、AIで解析できれば新しい発見があると思っています」(廣川氏)
現在はAIとの連携検証も進めており、顧客ニーズの分析やターゲティング精度の向上に活用していく構想です。これまで担当者の経験や勘に頼っていた部分についても、データを活用することでより客観的な判断が可能になると期待しています。
また、同社の売上の約7割は海外市場が占めており、今後はグローバルでのデータ活用も重要なテーマです。国内で培ってきた顧客コミュニケーションのノウハウを海外拠点へ展開し、世界規模で顧客理解を深める仕組みづくりを進めていきたいと考えています。「顧客との接点情報は今後さらに重要になると思います。データを蓄積するだけでなく、そこから新たな価値を生み出せる環境を整えていきたいですね」(廣川氏)
導入を検討している企業へのアドバイス
「これから本格的にMAへ取り組みたいBtoB企業にはおすすめできます。」そう語る廣川氏。
シンプルなメール配信やフォーム運用から始められる一方で、顧客データの分析や営業システムとの連携など、企業の成長や運用レベルに合わせて活用の幅を広げられることが大きな魅力だといいます。
「最初から完璧な運用を目指す必要はありません。まずは顧客との接点を蓄積し、それを活用する仕組みをつくることが大切だと思います。私たちも最初から今の運用ができていたわけではなく、少しずつ活用範囲を広げてきました」(廣川氏)
また、長年利用を続けている理由として、機能面だけでなくサポート体制への信頼も挙げます。「本心からおすすめできます。同じようなBtoB企業であれば十分に価値を感じられると思いますし、困った時に相談できるパートナーがいることも大きな安心材料です」(廣川氏)
眠っていた顧客情報を資産へ変え、継続的な顧客コミュニケーションを生み出す。日本電子様の取り組みは、これからデジタルマーケティングに取り組むBtoB企業にとって、多くのヒントを与えてくれる事例と言えるでしょう。
※Salesforce:株式会社セールスフォース・ジャパンが提供する、世界トップシェアを誇るクラウド型の CRM(顧客関係管理)および SFA(営業支援)プラットフォーム。